「新刊が出たぞ」
「君に国木田独歩趣味があるとは知らなかった」
「ないぞ」
「は?」
「そんな趣味はないぞ」
「では、なぜこんな本が出るのだ」
「ここ1年版ぐらいひたすら多摩、八王子方面を歩いた結果として、そのあたりの魅力を再発見して本にまとめたいと思っていた」
「ハイキングの歴史【改訂版】: 登山、行軍、そして探勝や京王帝国の興亡: 激動の多摩丘陵百年史では足りないのか?」
「うん、主旨がちょっと違う。本当は新しいハイキングの本を書く予定もあったがそれも少し違う」
「それで、この本になるわけだね」
「そうだ。だから、多摩八王子方面を扱った本で国木田独歩のいう武蔵野とは少し違う」
「連続性はないの?」
「それがあるんだ。都市化の進行により国木田独歩的な武蔵野は後退を続けて結局武蔵野台地をはみ出して多摩や八王子方面に見出すしかなくなっていったのだよ」
「でも住宅が多いからもう同じものは見えないよね」
「そうだ。同じものは見えない。むしろ、自然と住宅街のハイブリッドな場所に面白みを見出そうという【再発見】の本なのだ」